2007年06月13日

寺田寅彦全集〈第15巻〉科学雑纂2 寺田 寅彦

寺田寅彦全集〈第15巻〉科学雑纂2@amazon 寺田 寅彦 (単行本 - 1998/2)
 ・・・・・・統計の理論が不完全なためか、または、統計的にreproductive出来る現象としての理論がたたないためか、どうか知らぬが、従来の物理学ではこの方面のこと[割れ方の研究]はあまりやられていない。(P.315)
 硝子などに衝撃を与えると二つ、四つと割れ目が入る。つまり整数倍的なQuantum的な割れ目ができる。このような問題に対して現在の物理学者は目をつむり捨てて省みない。こんなことを云うと物理学者に叱られるかもしれないが、全く放られているのである。(P.315)
 ・・・・・・原子がなぜに量子的discontinuousなものでありうるか、割れ目は何故に整数倍で行くか、この点で我々のこの研究と新しい物理学の問題とは繋がっているのではあるまいか。近頃、Brogli,Schrödingerなどによって、波動力学の微分方程式は整数倍の時にのみ解(Solution)を得られると云われている。このような意味で、割れ目が物理学上の根本問題と存外深い関係があるのではないかとの大望を抱いているが誰も相手にしてくれない。(P.316)

 金平糖に何故角が出るか、その数が何故統計的に決まっているか。その返答は如何に偉い物理学者でも出来ない。こんなことでは現代の物理学もどこかに欠けているところがあるのだと思う。(P.316)

 生物でも物理学の現象には従わなければならない。鳥は上にのぼるが、下に落ちない生物はないですからね。(P.317)

 (X氏 幽霊についてはどうお考えですか。)
 僕は幽霊には興味はない。・・・・・・・(P.318)
 ・・・・・・・・・(P.320)

 光ばかりでなく、音のAnomalieのあるという例がある。・・・・・・
 見えぬ光、聞こえぬ音はおかしいが、実際聞こえぬ音がある。近頃は音の定義が変わった。負け惜しみではないが。(P.321)
 聞こえぬ音ときこえない波長の長い音とは本質的に異(ちが)う。耳に聞こえる振動数の多いものは空気の圧縮され方が大きく拡がる時には温度が下がる。すなわちadiabaticなおとである。これに反して、聞こえない振動数の少ない音は様子がちがうisothermicな音である、故に音でないとも云える。(P.321-322)

後記
寺田寅彦先生談話会
『植物及動物』昭和十二年十月一日。昭和九年二月二十二日の生機学談話会の筆記。初出の冒頭に、この記録を留めていた杉靖三郎による、文責は筆記者にある旨の前書き(省略)と、雑誌編集部による以下の注が付されていた。(P.359)



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