2008年07月01日

消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ ジャン・ハロルド ブルンヴァン、大月隆寛、重信幸彦、 菅谷裕子

消えるヒッチハイカー@amazon―都市の想像力のアメリカ ジャン・ハロルド ブルンヴァン、大月 隆寛、重信 幸彦、 菅谷 裕子 (単行本 - 1988/10)
はじめに

 本書は、現代のアメリカ社会で広く語られ、流布されているさまざまな話について書かれたものだ。多くの人はこれらの話を「実際にあったこと」として聞いている。・・・これらをわたしたちの同時代のフォークロアの代表的なものであるとみなす・・・。・・・など、これら誰もがいかにもありそうだと思える話を「都市で信じられる話」、あるいはより簡潔に「都市伝説と呼んでいる。
訳注1――
訳注2――(P.15)

 ・・・。しかし都市伝説は、最近のできごと(あるいはそうでなくても人々のよく知っているできごと)に、批判的な、また超自然的なひねりをきかせた、まさに現実的な話なのだ。これら都市伝説は、白人アングロサクソン文化の不可欠の要素であり、現代社会の最も洗練された「普通の人々」――つまり若者、都市生活者、高等教育を受けた人々――によって語られ、信じられている。この都市伝説の語り手たちは、それぞれの話が本当のことであるかについて、自分の手で確かめようとすることはない。彼らは、確かな証拠を握っているごく一部の人間に聞いたとか、あるいは、マスメディアによって流される情報で知ったなどと言いながら、それらの話を語ってゆく。マスメディアがうわさやゴシップをもっともらしく扱う時、同時にそのマスメディア自体がそれら都市伝説を広め、権威づけることに手を貸しているのだ。とは言うものの、本書において示されるように、これら都市伝説はあくまでフォークロアなのであって、事実としての歴史がそのまま語られているというわけではない
訳注3――(P.14-15)

 民俗学の目的とは、オーラル・トラディションズ口述の伝承の正体を暴露することではない。
訳注2――これは今回、”oral tradition”につけた訳語だ。率直な訳にすれば「口頭伝承」か。しかしそれを、「口承文芸」として囲い込める領域に重ねてしまうことには慎重でなければなるまい。ここで問題となるのは、人と人との口伝えの回路の中で構造化され集積されるような「経験」のことだ。それはまた、しばしば日本で「伝承」という言葉の前提とされてしまう、ある種の「歴史的深さ」ともズレてしまうものだということを意識しておきたい。(P.16)

 ・・・。また、多くの都市伝説は一般向けの印刷物や、映画、テレビ番組のプロットとして利用されてもきているが、これらに関する徹底的、体系的考察もまた、本書の期するところではないことをおことわりしておきたい(それらについては、わずかながら注の中で)。

1 古い伝説から新しい伝説へ

 わたしたちは自分たちの言語の文法について意識しないように自分たちのフォークロアについても意識していない。言葉と習慣とによって人から人へと日常的に伝えられる「伝承つまり、知恵、知識、誰もが受け入れる行動様式といったものに従うとき、わたしたちは、そのわたしたち自身のフォークロアのかたちや内容については気にしないものだ。それどころか、わたしたちは他人が話す情報にはただ耳をかたむけるだけで、右から左へ次の聞き手へとわたしてゆく。こうした無意識のうちに伝えられてゆく口述の回路の中で、一つのはっきりとした話の筋を獲得してゆく情報のことを語りのフォークロアと呼ぶ。そして、これは本当のことだと主張されるような話を「伝説と呼ぶ。
訳注1――
訳注2――・・・・・・。しかし本書で扱っているような話は、日本では伝説として分類されることはなく、とりあえず、「世間話」という口承文芸の雑然としたオモチャ箱的ジャンルに分類されることになる。(P.21)

 広く普及した読み書きの能力や、素早いマスコミュニケーション、そして目まぐるしい移動が可能となったわたしたちの時代に、伝説、それも都市伝説が作られ続けることなどないと思われるかもしれない。開拓者であったわたしたちの祖先は、状況の変化や待ち受ける危険についての情報を伝えるためにこのような口述の伝承に大いに頼らなくてはならなかっただろう。しかし、もはやわたしたちは、事実をゆがめるようなただの「口述の報告は、全く必要としない。だが、にも関わらず、少し考えてみるだけでも、わたしたちは異様で、魅力的で、それでいて真偽が確認されることのないようなうわさやちょっとした話をたくさん思い出すことができる。そして、これらの話はよくわたしたちの耳に入ってくる。
訳注3――(P.21)


下水溝のワニ」(P.140)
posted by raycy at 12:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本メディア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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